
サポート詐欺が狙うのは“人の判断”。従業員を守る仕組みづくりを。
近年、企業を狙ったサイバー犯罪が巧妙化しています。その中でも「サポート詐欺」は、ウイルス感染を装った偽の警告画面や、銀行を名乗る自動音声を使い、従業員の“判断の瞬間”を狙ってくる攻撃です。
実際に、企業の資金が億単位で流出した事例も報じられています。しかし、こうした被害は「ITに詳しくないから起きる」のではありません。攻撃者が狙っているのは、人が焦りやすい状況や心理そのものです。
“人の判断”が狙われる理由
企業のセキュリティは年々強化されています。それでも被害が出るのは、攻撃者が「システム」ではなく、経理・総務・現場担当者など、日常業務を支える人の判断を突破口にしているからです。
どの会社にも、こんな場面があります。
- 月末で事務所が慌ただしい
- 現場からの電話が続き、集中力が途切れる
- 「急ぎでお願いします」と依頼が重なる
- 新人のフォローで周囲がバタつく
- 天候で工程がズレて、事務所が混乱している
こうした“忙しい瞬間”は、判断が雑になりやすく、攻撃者にとって絶好のタイミングです。これは従業員の能力の問題ではありません。むしろ、真面目に働く人ほど「早く対応しなきゃ」と焦りやすく、だまされやすいのです。
事例:経営者が「責められない」と感じたケース
建設業の中小企業で、月末の支払い処理が重なるタイミング。PCに突然「ウイルス感染しました」という偽の警告画面が表示され、焦った経理担当者が表示された番号に電話してしまいました。
結果、遠隔操作ソフトを入れられ、支払い予定の数百万円が別口座へ送金されてしまいました。
担当者は「自分のせいだ」と強い罪悪感を抱え、経営者は「責められない」と判断し、社内で共有されないまま処理された。この“沈黙”こそが、次の被害を呼び込む温床になります。
従業員を守るために、経営者が整えるべき仕組み
サポート詐欺は、従業員の注意力だけでは防ぎきれません。必要なのは、人の判断を支える仕組みです。
送金・承認プロセスの二重化
担当者が単独で送金できる仕組みは、攻撃者にとって最短ルートです。二重承認や、一定額以上の送金は別ルートで確認するなど、だまされても被害が広がらない仕組みが必要です。
不審な画面・音声は“まず相談”の文化
「迷惑をかけたくない」という気持ちが、被害を大きくします。相談しやすい空気は、最強の防御になります。
現場向けの“短い”教育
長い研修は続きません。月に一度、5分で共有できる「最新の詐欺事例」だけでも効果は大きいです。
万が一の復旧・BCPの整備
被害が出た後の対応は、企業の信頼に直結します。復旧手順や連絡体制を事前に整えておくことで、損失を最小限に抑えられます。
最後に:サイバー保険は最後の防波堤
サポート詐欺が狙うのは、従業員の能力ではなく、人の判断の瞬間です。だからこそ、経営者が整えるべきは「気をつけて」ではなく、だまされても被害が広がらない仕組みです。
相談しやすい文化を育てること。小さな違和感を共有できる環境をつくること。その積み重ねが、会社を守る確かな力になります。
そして、どれだけ仕組みを整えても、人の判断”が完全にゼロになることはありません。万が一の時に、復旧支援や専門家の伴走があることは、経営者にとって大きな安心につながります。
サイバー保険は、そうした「最後の防波堤」として機能します。
平時の備えと、非常時の支え。その両方がそろって初めて、会社は本当の意味で守られます。
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