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2025年6月、千葉県の建設会社で専務取締役を務めていた男性が、急性心筋梗塞で亡くなった件について、労働基準監督署が労災と認定していたことが報じられました。一見すると「経営者=労災の対象外」と思われがちですが、今回のケースでは、実際の働き方が「労働者」としての実態に近かったことが認められました。この認定は、形式的な肩書きではなく、働き方の実態に目を向ける重要性を社会に問いかけています。
1. 労災認定の背景と判断基準
労災保険の対象となるのは、原則として「労働者」です。つまり、誰かの指示のもとで働き、賃金を受け取っている人が対象です。
一方で、取締役や役員は「経営者」として扱われるため、通常はこの対象には含まれません。
しかし今回のケースでは、以下のような実態が重視されました
・現場での監督業務を日常的に行っていた
・月100時間を超える残業があった
・報酬が経営判断ではなく、現場での労務に対する対価だった
2. 名ばかり役員と労働者性の判断
中小企業や建設業界では、役員が現場に出て働くことは珍しくありません。
「名ばかり役員」とは、肩書きは役員でも、実際には従業員と同じように働いている人を指します。
労働者性の判断では、以下のような観点が重要です
・指示命令に従って働いているか
・報酬が労務の対価か
・勤務時間に拘束されているか
・自分の裁量で仕事を決められるか
・他の人に代わってもらえるかどうか
これらを総合的に見て、実態として労働者と認められれば、たとえ役員であっても労災の対象となる可能性があります。
3. 今後の制度と社会のあり方
このような事例は、制度と現場の間にあるギャップを浮き彫りにしています。
今後は、以下のような動きが期待されます
・働き方の実態に基づいた制度の見直し
・中小企業における労務管理の支援強化
・「肩書き」ではなく「実態」で判断する社会的な意識の醸成
現場で働くすべての人が、適切に守られる仕組みづくりが求められています。
どんな肩書きであっても、守られるべき命があります。
私たちは、一人ひとりの働き方と向き合いながら、その人らしい毎日を支える備えを、これからも届けていきます。